葬式で「ありがとう」を言わないほうがいいのか、ふと迷う場面があります。
結論から言うと、気持ちそのものが失礼になるわけではありません。ただし香典や返礼品など「形のある厚意」を受ける場面では、言葉の選び方に独特の慣習が残っています。
この記事では、遺族・参列者の立場別に、当日から後日まで困らない言い換えと例文をまとめます。言ってしまったときのフォローも押さえるので、必要なところだけ拾い読みしてみてください。
葬式で「ありがとう」を言わない?まず押さえたい基本の考え方
最初に結論を固めると、葬式で「ありがとう」を絶対に言ってはいけない、という話ではありません。
ただし場面によっては別の言い方のほうが角が立ちにくいので、ここで判断の軸をつくっておきましょう。
「言ってはいけない」ではなく「場面で使い分ける」
「ありがとう」は前向きで明るい響きがあるため、悲しみの場では浮いて聞こえることがあります。そのため、場の空気に合わせて少し落ち着いた言葉に替えるだけで、相手に安心感が出ます。
一方で、弔問に来てくれたこと自体への感謝まで禁じるわけではありません。気持ちは同じでも、言い方を「お心遣い」などに変えると、葬儀の場に馴染みやすくなります。
香典・供花は「厚意」なので受け方の言葉が少し特殊
香典や供花は、遺族の負担を支えるための厚意です。ここで「ありがとうございます」と言うと、商取引の受領のように聞こえると感じる人がいるため、控えめな表現が選ばれやすい面があります。
だからといって冷たい対応が正解ではありません。「恐れ入ります」「お預かりいたします」のように、丁寧で静かな言葉にすると、相手の気持ちを尊重しつつ受け取れます。
宗派や地域差より「相手の心情」を優先すると迷いにくい
宗派や地域によって言葉遣いの慣習が違うこともありますが、参列者側が完璧に把握するのは難しいものです。ここで頼りになるのは、故人と遺族の心情に寄り添う姿勢です。
迷ったら、明るい言葉よりも「お悔やみ」「お心遣い」のような落ち着いた表現を選ぶと安全です。つまり相手が安心して受け取れる言い方を優先すると、失礼になりにくいです。
香典など“形のある厚意”は控えめな言葉が無難です
迷ったら「お心遣い」「恐れ入ります」に寄せると安心です
では次に、実際に悩みやすい受付や授受の場面を、具体的な言い方で整理します。
例えば、受付で香典を渡す側は「このたびはご愁傷さまです」と短く伝え、受け取る側は「恐れ入ります」と返すだけでも十分丁寧です。言葉を足しすぎないほうが場に合います。
- 「ありがとう」を避けたいのは主に香典・返礼など授受の場面
- 感謝は「お心遣い」「恐れ入ります」に言い換えると落ち着く
- 宗派よりも「相手が受け取りやすい静かな言い方」を優先
受付・香典・返礼品で困らない言葉の選び方
基本の考え方がわかったところで、次は当日の「短いやり取り」を固めます。
受付は慌ただしいので、型を用意しておくと気持ちがラクになります。
受付でのひと言は短く、感情を盛りすぎない
受付では、相手もこちらも言葉を選ぶ余裕があまりありません。ここで長く話すと列が詰まり、遺族側にも負担がかかるため、短い挨拶が基本になります。
参列者は「このたびはご愁傷さまです」「心よりお悔やみ申し上げます」などが無難です。遺族側も深く頭を下げて「恐れ入ります」と返せば、丁寧さは十分伝わります。
香典を受け取るときは「恐れ入ります」が無難
香典を受け取る場面は、いちばん「ありがとう」と迷いやすいところです。感謝を言いたい気持ちは自然ですが、儀礼の場では控えめな言葉を選ぶと、幅広い年代に受け入れられます。
具体的には「恐れ入ります」「お預かりいたします」「頂戴いたします」などが使いやすいです。気持ちは態度で示せるので、言葉は静かに整えるくらいがちょうどいいでしょう。
返礼品を渡すときは「お納めください」で角が立たない
会葬御礼(会葬者へ渡すお礼の品)や即日返しなどを渡すときも、言葉選びに迷います。ここで「ありがとうございました」と強く言うより、品を添える意味合いを出すと自然です。
「ささやかではございますが、お納めください」「こちらをお受け取りください」が定番です。相手が辞退しそうなら無理に押しつけず、軽く会釈して渡すだけでも失礼になりません。
| 場面 | 避けたい言い方の例 | 無難な言い換え |
|---|---|---|
| 香典を受け取る | ありがとうございます | 恐れ入ります/お預かりいたします |
| 供花・供物を受け取る | 助かります | ご厚志を賜り恐れ入ります |
| 返礼品を渡す | お礼です | お納めください/お受け取りください |
| 受付での返事 | どうも | 恐れ入ります/かしこまりました |
言い換えの型があるだけで、当日の緊張が少しやわらぎます。次は、遺族としての「感謝」をもう少し丁寧に伝える場面を見ていきます。
Q:香典を渡したとき「ありがとう」と言われたらどうする? A:軽く会釈して「とんでもございません」と返せば十分です。
Q:受付で言葉が出ないときは? A:無理に話さず、黙礼(黙って会釈)でも失礼ではありません。
- 受付は短く済ませるほど、全員がラクになります
- 香典の受領は「恐れ入ります」が幅広く無難です
- 返礼品は「お納めください」で落ち着いた印象になります
遺族としての「感謝」の伝え方
受付の型を押さえたら、次は遺族側の言葉です。
感謝を伝えつつも、悲しみの場に合う表現へ整えるのがコツになります。
弔問へのお礼は「お心遣い」に言い換えると上品
遺族としては、来てくれたこと自体に感謝があります。ただ「ありがとう」を連発すると明るく聞こえることがあり、相手によっては場に合わないと感じる場合もあります。
そこで「ご会葬いただき恐れ入ります」「お心遣いを賜り、痛み入ります」のように言い換えると、気持ちは伝わりつつ落ち着きも出ます。言葉に迷うほど、定番表現が助けになります。
会食やお見送りでは「お疲れさまでした」が助けになる
精進落とし(葬儀後の会食)やお見送りでは、参列者も気疲れしています。ここで遺族が丁寧に声をかけると、場がやわらぎ、参列者も帰りやすくなります。
例えば「本日はお忙しい中ありがとうございました」より、「本日はお疲れさまでした。お気をつけてお帰りください」のほうが自然に聞こえることがあります。状況に合わせて、ねぎらいを混ぜると伝わりやすいです。
後日の礼状は「無事に済みました」を避けて丁寧に
葬儀後に礼状や連絡をするなら、形式を整えると相手が読みやすくなります。なお、「無事に終わりました」は軽く聞こえることがあるため、避けたほうが安心です。
代わりに「滞りなく葬儀を相営みました」「おかげさまで葬儀を執り行いました」のように、落ち着いた表現を使うと丁寧です。感謝は「ご厚志」「お心遣い」に寄せると、文章全体がまとまります。
会食やお見送りは「お疲れさまでした」も使えます
後日の礼状は「無事に」を避け、落ち着いた表現へ
ここまでが遺族側の基本です。次は参列者側として、気まずくならない感謝の伝え方を見ていきます。
例えば、会食の席で遺族が「本日はお疲れさまでした。お寒いのでお気をつけて」と添えるだけで、参列者は帰るきっかけをつかみやすくなります。長い挨拶より、短い配慮が効きます。
- 遺族は「お心遣い」「ご会葬」に寄せると落ち着きます
- お見送りや会食は、ねぎらいの言葉が助けになります
- 礼状は「滞りなく」「相営み」など丁寧語で整えます
参列者としての「感謝」の伝え方
遺族の言い方を知ると、参列者側も合わせやすくなります。
大切なのは、相手の負担を増やさずに気持ちを伝えることです。
遺族への感謝は「お世話になりました」で十分伝わる
参列者が遺族に感謝を伝える場面は意外と多いです。例えば受付で世話になったり、会食で席を用意してもらったりすると、言葉をかけたくなります。
そんなときは「お世話になりました」「いろいろとお手数をおかけしました」で十分です。明るい言葉よりも、労をねぎらう言い方のほうが場に合いやすく、相手も受け取りやすくなります。
故人への感謝は思い出を添えると自然になる
故人に対して「ありがとう」を言いたい気持ちはとても自然です。式の最中に口に出す場面は少なくても、弔問時の会話で思い出として伝えると、遺族にとっても支えになります。
例えば「生前は大変お世話になりました。いつも気にかけていただきました」のように、具体的な一言を添えると温度が伝わります。抽象的な美辞麗句より、短い実感のほうが心に残りやすいです。
会社関係は短文+相手の負担を減らす配慮が要
会社関係の弔問では、言葉が形式的になりがちです。ただし遺族側は対応で疲れているので、長い会話は負担になりやすい点に注意したいところです。
「このたびはご愁傷さまです。ご無理なさらないでください」と短く伝え、深追いしないのが基本です。もし手伝えることがあるなら、具体的に「後日で構いませんので」と添えると、相手が断りやすくなります。
| 相手 | 気持ち | 使いやすい言い方 |
|---|---|---|
| 遺族 | 配慮への感謝 | お世話になりました/お手数をおかけしました |
| 遺族 | 弔問への気持ち | 心よりお悔やみ申し上げます |
| 故人 | 生前の恩 | 生前は大変お世話になりました |
| 会社関係 | 負担軽減 | ご無理なさらないでください |
参列者側は、短く整えた言葉ほど相手を疲れさせません。最後に、「ありがとう」と言ってしまった場合のフォローを押さえておくと、さらに安心です。
例えば、思わず「ありがとうございました」と言いそうになったら、「このたびは…恐れ入ります」と言い換えても大丈夫です。途中で言い直しても、丁寧に伝えようとする姿勢は残ります。
- 参列者は「お世話になりました」が幅広く使えます
- 故人への感謝は、短い思い出を添えると自然です
- 会社関係は短文で、遺族の負担を増やさない配慮が要
「ありがとう」と言ってしまった・言われたときのフォロー
どれだけ準備しても、当日は緊張して言葉が滑ることがあります。
ここでは「やってしまった」と感じたときの落としどころを決めておきます。
言ってしまっても深追いせず、すぐ言い換えれば大丈夫
参列者が「ありがとうございました」と言ってしまっても、場が壊れるほどの失礼になることは多くありません。大事なのは、そこで慌てて長く弁解しないことです。
すぐに「恐れ入ります」「お悔やみ申し上げます」と言い換え、会釈で締めれば十分整います。言い直しが短いほど自然に見えるので、気持ちを切り替えて所作を丁寧にするほうが効果的です。
言われた遺族側は受け止めて、言葉を整えて返せばよい
遺族が参列者から「ありがとう」と言われた場合、相手は手伝ってくれたことへの感謝を表したいだけかもしれません。その場で正しさを指摘すると、かえって気まずくなることがあります。
「恐れ入ります」「お心遣いに感謝いたします」と受け止めて返すと、場の空気が落ち着きます。相手の善意を否定しないまま、こちら側の言葉を整えるのがいちばん穏やかです。
気になるときは後日ひと言を添えて関係を守る
どうしても気になって眠れないほどなら、後日ひと言を添える方法もあります。ただし、相手に「失礼でしたよね」と謝りすぎると、相手も返事に困ってしまいます。
「本日は取り込みの中、失礼いたしました。改めてお悔やみ申し上げます」と短く整えるくらいで十分です。要点は、相手の負担を増やさずに気持ちを収めることにあります。
遺族側は受け止めて「恐れ入ります」に整えると穏やかです
後日連絡は“謝りすぎない短文”が基本です
言葉遣いは完璧よりも、相手を思う姿勢が伝わるかどうかが大切です。型を用意しておけば、当日の不安はかなり減ります。
例えば、帰宅後に気になったら、メモに「恐れ入ります」「お心遣い」と書いておき、次の機会に備えるだけでも落ち着きます。準備は小さくて構いません。
- 言い間違いは引きずらず、短く言い換えるのがコツ
- 遺族側は善意を受け止め、落ち着いた言葉で返す
- 後日連絡をするなら、相手が返信不要な短文にする
まとめ
葬式で「ありがとう」を言わないほうがよい、と言われるのは、感謝を禁じるためではありません。香典や返礼品など、厚意の授受が絡む場面では、控えめで落ち着いた言葉が選ばれやすいという慣習があるためです。
迷ったら「恐れ入ります」「お心遣いを賜り」といった表現に寄せると、年代や立場が違っても受け取ってもらいやすくなります。受付では短く、会食やお見送りではねぎらいを添える、と場面で使い分けると自然です。
もし言ってしまっても、短く言い換えれば大きな問題になりにくいものです。完璧さより、相手の気持ちを疲れさせない配慮を優先して、落ち着いて対応してみてください。


