葬儀の場や案内状に記された「当家」という言葉、意味をあいまいにしたまま読み過ごしている方は少なくありません。「ご当家」「当家儀」など、少しずつ形が変わって登場するこの言葉には、葬儀の主催者を敬意を持って指し示すという明確な役割があります。
「当家」と「喪家」、「遺族」、「喪主」の違いが分かりにくいと感じるのは、これらが似た場面で混在して使われるためです。読み方も複数あり、どの場面でどの言葉を使えばよいか迷うことがあるでしょう。
この記事では、「当家とは」という基本の意味から、関連する言葉との違い、文書や口頭での使い方まで、葬儀の場で必要な知識を整理します。急な葬儀の場でも落ち着いて対応できるよう、事前に確認しておくと安心です。
当家とはどういう意味か
「当家」という言葉は、葬儀を執り行っている家全体を指す表現です。ここでは言葉の成り立ちと、葬儀の場で果たす役割を整理します。
「当家」の読み方と基本的な意味
「当家」は「とうけ」または「とうや」と読みます。葬儀の文脈では「とうけ」と読まれるのが一般的です。
「当」という漢字には「この」「その」という指示の意味のほか、相手や主体を指し示す接頭語としての働きがあります。「当家」はそのままでは「この家」「こちらの家」という意味になり、葬儀の場では喪主を中心とした家族全体を一つの「家」として表す言葉として定着しています。
「ご当家」と「ご」をつけた形でも使われます。葬儀社のスタッフや会場の司会者が遺族を指す際に「ご当家の皆様」と呼びかける場面がこの典型です。
葬儀の場での使われ方
「当家」は、主に葬儀を主催する家族側を指す言葉として使われます。案内状・会葬礼状・式場看板などの文書、葬儀の司会アナウンス、葬儀社との打ち合わせなど、さまざまな場面で登場します。
司会者が式を進行する際に「当家の意向により」と述べる場合は、遺族全体の総意として決定された方針を参列者に伝えるニュアンスがあります。個人の意思ではなく「家」としての決断であることを示すため、改まった印象を与える言葉です。
「ご当家」という丁寧な呼び方は、直接「遺族の方」と呼ぶよりも一歩引いた距離感をもちながら敬意を示す、日本の葬儀ならではの表現といえます。
・読み方:「とうけ」が葬儀の場では一般的
・意味:葬儀を執り行っている家全体を指す
・使われる場面:案内状・司会アナウンス・葬儀社との対応
・「ご当家」は葬儀社やスタッフが遺族を指す敬称として頻出
- 「当家」は葬儀を主催する家族全体を指す言葉
- 葬儀の場では「とうけ」と読むのが一般的
- 「ご当家」は敬意を込めた呼び方で、司会や葬儀社がよく使う
- 案内状・礼状・司会アナウンスなど多くの場面で登場する
当家と喪家・遺族・喪主の違い
「当家」に近い言葉として「喪家」「遺族」「喪主」「施主」があります。それぞれが異なる視点から葬儀に関わる人や家を表しているため、使い分けのポイントを整理しておくと対応に迷いにくくなります。
当家と喪家の違い
「喪家(そうけ)」は「喪に服している家」を直接表す言葉で、「当家」とほぼ同じ意味で使われます。どちらも葬儀を執り行っている家を指す点では共通です。
ただし、現代の葬儀の場では「喪家」よりも「当家」のほうが広く使われる傾向があります。「喪家」は「喪」「死」といった言葉を直接含むため、より重い響きをもつのに対し、「当家」はニュートラルで柔らかい印象があるためです。
なお、「喪家」の読み方は地域によって異なる場合があります。東日本では「そうか」または「そうけ」、西日本では「もけ」と読むことがあるとされています。地域によって慣習が異なる表現の一つです。
当家と遺族の違い
「遺族」は、故人の配偶者・子・親・兄弟姉妹など、残された家族や親族を「人々の集まり」として指す言葉です。法律や行政の文書でも広く使われる客観的な表現です。
「当家」が「家」という単位でまとめて指し示す言葉であるのに対し、「遺族」は「人」の集まりを指す点が異なります。司会者が「当家の皆様」と呼びかける場面はあっても、「遺族の皆様」と直接呼びかける場面は少ないのはこのニュアンスの差によるものです。
行政手続きや保険・相続などの法律的な文脈では「遺族」という言葉が使われる場面が多く、葬儀の現場での慣用表現としては「当家」が適しています。
喪主・施主との関係
「喪主(もしゅ)」は、遺族の代表として弔問客への対応や挨拶を担う人を指します。「施主(せしゅ)」は、葬儀費用を負担し、運営上の責任者となる立場です。多くの場合、喪主と施主は同一人物が兼ねますが、状況によって別々になる場合もあります。
「当家」はこれらの役割を担う人を含む、葬儀主催者側の家族全体を包括的に指す言葉です。喪主・施主は個人を指し、当家は家全体を指すという関係にあります。
| 言葉 | 読み方 | 指し示す対象 | 主な使用場面 |
|---|---|---|---|
| 当家 | とうけ | 葬儀を主催する家族全体 | 案内状・司会アナウンス・葬儀社対応 |
| 喪家 | そうけ・もけ等 | 喪に服している家(当家とほぼ同義) | 文書・用語としての表記 |
| 遺族 | いぞく | 残された家族・親族(人々の集まり) | 法律・行政・一般的な呼称 |
| 喪主 | もしゅ | 遺族の代表個人 | 挨拶・弔問客対応 |
| 施主 | せしゅ | 葬儀費用を負担する責任者(個人) | 葬儀社との契約・費用負担 |
- 「当家」は家族全体を指す包括的な言葉、「喪主」「施主」は個人を指す
- 「遺族」は人の集まりを指す客観的な語で、法的文書でも使われる
- 「喪家」は当家とほぼ同義だが、現代では当家のほうが多用される傾向がある
- 地域や場面によって使い分けが変わることがある
当家儀・ご当家など表現のバリエーション
「当家」は単独で使われるだけでなく、「当家儀」「ご当家」などの形に変化して登場します。それぞれが使われる場面と込められた意味を知っておくと、文書を受け取ったときに戸惑いにくくなります。
当家儀という表現の意味
「当家儀(とうけぎ)」の「儀」は「~に関する件」「~のこと」を表す改まった表現で、弔事の文書に頻出します。「当家儀」とすることで、「当家に関する件」という意味になり、案内状や通知文において遺族側の意向を伝える際に使われます。
葬儀の案内状に「当家儀、誠に勝手ながら…」と記されている場合、「遺族としての総意として、以下のことをお伝えします」というニュアンスになります。香典・供花の辞退、参列者の制限(家族葬)、直葬・密葬の通知などを伝える文脈でよく見られます。
「儀」は故人の名前の後につく「〇〇儀」という形でも使われます。看板や文書で「山田太郎儀」とあれば「山田太郎に関する葬儀」という意味です。「当家儀」と「〇〇儀」は使われる主語が異なるだけで、構造は同じです。
ご当家という呼び方

「ご当家」は「当家」に丁寧語の「ご」をつけた表現で、葬儀社のスタッフや司会者が遺族を指す際に使います。「ご当家の皆様にお知らせします」のように、参列者全体に向けてアナウンスする場面に多く見られます。
直接「遺族の方」と呼ぶよりも一歩引いた表現で、相手への敬意をさりげなく示すことができます。悲しみの中にある家族に対して、親しみを持ちつつも品位を保つ日本の葬儀文化が反映された言い回しです。
「ご当家」という呼び方は、参列者の立場からも使えます。葬儀後の挨拶などで「ご当家のご意向に従い…」と述べることで、遺族の意思を尊重する姿勢を自然に伝えられます。
案内状・礼状での文例
葬儀に関わる文書には、定型的な文例があります。「当家」「当家儀」が使われる代表的な文例を知っておくと、案内状を受け取ったときや文書を作成するときに役立ちます。
案内状での使用例としては、「当家の意向により、葬儀は近親者のみにて執り行います」「当家儀、誠に勝手ながらご香典ご供花の儀は固くご辞退申し上げます」などがあります。会葬礼状では「当家を代表して御礼申し上げます」のように、喪主個人ではなく家族全体の感謝として用いられます。
・当家:葬儀主催家族全体を指す基本形
・ご当家:スタッフ・司会者が遺族を指す敬称
・当家儀:案内状・礼状などの文書で「家としての意向」を伝える形
・〇〇儀:故人名に続けて「この方に関する葬儀」を示す形
- 「当家儀」は案内状でよく使われる改まった文書表現
- 「ご当家」は葬儀スタッフや司会者が遺族に敬意を示す呼び方
- 文書では「当家の意向により」などの形で遺族の総意を伝える
- 参列者側も「ご当家のご意向に従い」と使うことができる
葬儀文書で当家が使われる場面と注意点
「当家」という言葉は、葬儀に関わる様々な文書の中で登場します。受け取る側として正確に読み取るためのポイントと、作成する側として気をつけたい点を整理します。
案内状・訃報で確認すべきこと
訃報や葬儀案内状に「当家儀」が使われている場合、その後に続く文面が遺族の総意として伝えられていることを意味します。「当家の意向により家族葬にて執り行います」とあれば、一般参列の辞退を意味します。
「当家としましては、誠に勝手ながら…」という前置きは、遺族が参列者に対して配慮と共に何らかのお断りをするときの定型表現です。ご香典・ご供花・弔電の辞退などがこれに続く場合が多く、遺族の意向を尊重した行動が求められます。
近年は家族葬の増加により、案内状で「当家」が使われる頻度が高まっています。受け取った際は、書かれた内容を丁寧に確認し、参列・弔問・香典に関する遺族の意向に沿うよう対応するとよいでしょう。
会葬礼状での登場と読み方
葬儀後に送られる会葬礼状にも「当家」が使われます。「当家を代表して御礼申し上げます」という表現は、喪主個人としてではなく家族全体の感謝として述べるニュアンスです。
礼状では喪主の名前と「親族一同」を並記する形が多いですが、「当家」という言葉でまとめることで、家族全体が参列・弔問への感謝を伝えているという統一感が生まれます。礼状を受け取る側は、その家族全体への感謝として受け取るとよいでしょう。
礼状の文面は定型の書式が一般的に使われています。葬儀社が提供するテンプレートに「当家」が含まれる場合も多いため、会葬礼状を作成する際は葬儀社の担当者に確認するとよいでしょう。
葬儀社との対応で使われる場面
葬儀社のスタッフは遺族を「ご当家」と呼ぶのが業界での慣習です。打ち合わせや式当日のアナウンスで「ご当家のご意向として…」「ご当家からのご連絡では…」と使われます。
参列者の立場から見ると、「ご当家がこのようにおっしゃっています」というアナウンスは、司会者や葬儀スタッフが遺族の意向を参列者に伝える際の定型的な言い回しです。改まった場での表現として自然に受け取れるとスムーズです。
葬儀社との契約・打ち合わせの際、担当者が「ご当家は」と呼びかける場面があります。これは遺族全体に対して確認を取っていることを示しており、喪主一人ではなく家族としての決定を大切にしている表現です。
・案内状の「当家の意向により」→遺族全体の総意として伝えられている内容に従う
・礼状の「当家を代表して」→家族全体からの感謝として受け取る
・スタッフの「ご当家は」→遺族全体への確認・説明であると理解する
- 案内状に「当家の意向により」とあれば、遺族の総意に従った行動が必要
- 会葬礼状の「当家を代表して」は家族全体からの感謝を示す
- 葬儀社スタッフの「ご当家」は遺族への敬称として業界で慣用的に使われる
まとめ
「当家」とは、葬儀を執り行う家族全体を指す言葉で、「とうけ」と読み、喪主をはじめとした遺族を一つの「家」としてまとめて指し示す敬意ある表現です。
この記事で整理した「当家」「喪家」「遺族」「喪主」「施主」の違いを念頭に置きながら、実際に受け取った案内状や礼状の文面を改めて確認してみると、遺族の意向をより正確に読み取ることができます。
葬儀にまつわる言葉は、場面ごとに意味が少しずつ変わることがあります。分からないことが出てきたときは、葬儀社の担当者や各自治体の窓口に相談すると安心です。丁寧に向き合うことが、故人と遺族への誠実な礼儀になります。
本記事の内容は、関係省庁・自治体・業界団体などの公開資料をもとに整理したものです。費用・サービス内容・手続きは地域や事業者によって異なる場合があります。最終的な判断や契約・手続きの前には、必ず各自治体窓口や葬儀社・霊園などの公式窓口で最新情報をご確認ください。

