葬儀のために家族全員が自宅を離れる時間帯は、思いのほか長くなることがあります。通夜から告別式、火葬場での収骨まで含めると、丸1日以上自宅が無人になるケースも少なくありません。そのような状況で発生しうる問題が、空き巣被害・弔問客の対応漏れ・電話の取りこぼしの3点です。
留守番を頼む側は「誰に、何を、どこまで依頼するか」を事前に整理しておくことが、トラブルを防ぐ第一歩です。頼まれた側も、どう振る舞えばよいかを把握しておくと、いざというときに落ち着いて対応できます。
この記事では、葬儀中の留守番が必要になる場面、依頼する際のポイント、頼まれた際の役割と服装、防犯対策の具体策を順に整理します。どちらの立場にとっても参考になる内容です。
葬儀中に留守番が必要になる理由
葬儀が斎場や葬儀ホールで行われる場合、家族・親族は全員会場に向かうことが多く、自宅が長時間無人になります。この状況をふまえると、留守番を検討すべき場面は主に3つに整理できます。
空き巣被害のリスク
葬儀の日程は、回覧板・新聞の訃報欄・忌中札などを通じて近隣や不特定多数に知られることがあります。こうした情報を悪用し、葬儀中の留守宅を狙う空き巣の被害は実際に報告されています。
盗まれる対象は現金・預通帳・貴金属・故人の形見など多岐にわたります。大切な人を亡くしたうえに金品まで失う事態は、悲しみをいっそう深めることになります。戸締りだけでなく、人を置くという対策が防犯の観点から有効です。
忌中札については、近隣住民への伝達という本来の意図がある一方で、不特定多数に留守を知らせる結果になるリスクもあります。防犯を優先する場合は、掲示しない選択も一つの方法です。地域の慣習や親族の意向と合わせて判断するとよいでしょう。
弔問客の対応が必要な場合
葬儀が始まった後でも、式場の場所が分からず自宅を訪ねてくる弔問客がいます。また、何らかの事情で式場に行けず、自宅で香典や弔電を手渡したいという方もいます。
留守番がいなければ、そうした方への対応が完全に漏れてしまいます。式場への道案内や香典・弔電の預かりは、留守番が担う重要な役割の一つです。
弔問客への対応が想定される場合は、案内する式場の住所・電話番号、香典の預かり方(受け取るか・後日にお願いするか)を事前に確認して伝えておくとスムーズです。
帰宅後の準備が必要な場合
葬儀が終わって遺族が帰宅する前に、中陰壇(納骨前に遺骨を安置する場所)の設置や食事の準備が必要になることがあります。地域や宗派によって慣習は異なりますが、遺骨を迎える準備を整えておく役割を留守番が担うケースもあります。
こうした準備の内容は、葬儀社と事前に確認しておくことで、留守番への指示も明確にしやすくなります。何をどのタイミングで準備すればよいかを書き出してメモとして渡しておくと、留守番を引き受けた方も動きやすくなります。
・空き巣被害の防止(自宅の無人状態を回避する)
・弔問客への対応(式場案内・香典や弔電の預かり)
・帰宅後の準備(中陰壇設置・食事の用意など)
- 葬儀中の自宅は長時間無人になりやすく、防犯対策が必要です
- 忌中札・訃報欄・回覧板は留守を外部に知らせるきっかけになることがあります
- 弔問客の来訪や帰宅後の準備など、防犯以外の理由でも留守番が役立つ場面があります
- 何を依頼するかは事前の打ち合わせで明確にしておくと安心です
留守番を誰に頼むか、どう依頼するか
留守番は誰でもよいわけではありません。自宅の鍵を預けることになるため、深い信頼関係がある相手を選ぶことが基本です。依頼の仕方にも配慮が必要です。
依頼できる人の選び方
親族の中から留守番を頼む場合、葬儀に参列しない方(小さな子どもがいる方・体調が優れない方・足腰に不安がある方など)が担うことがあります。ただし、親族全員が会場に向かう場合は、近隣住民や親しい友人に依頼するケースが多くなります。
依頼する相手は、故人やご遺族と日頃から信頼関係がある方が望ましいです。顔見知りではあっても関係が浅い場合、貴重品の管理を含む役割を一任することへの不安が残ることがあります。
なお、留守番を引き受けてもらうことは、相手にとって時間と手間を要する大きな役割です。「断ることもできる依頼」として、相手の都合を丁寧に確認したうえでお願いするのが礼儀です。
依頼時に伝えておくべき内容
留守番を引き受けてもらう際は、以下の点を口頭やメモで明確に伝えておくとよいでしょう。担当時間の開始と終了、弔問客への対応方法(案内先の住所・香典の扱い)、電話が来た場合のメモの取り方、遺族が帰宅する目安の時間が主な項目です。
自宅の設備(エアコン・トイレ・お茶の場所など)も案内しておくと、留守番の方が過ごしやすくなります。仏壇への焼香(葬儀開始時間に合わせて線香・ろうそくを供える)を依頼する場合は、仏壇の場所や道具の保管場所も伝えておきます。
お礼の目安
留守番を引き受けてもらった方へのお礼は、関係性によって異なりますが、後日あらためて品物や現金を渡すのが一般的な対応です。タオルや石鹸などの日用品、菓子折り、カタログギフトなどが選ばれることが多いです。
金額の目安は一概には言えませんが、一日中対応してもらった場合はそれに見合った感謝を伝える機会を作るとよいでしょう。「忙しい中引き受けてもらった」という気持ちを、言葉と形の両方で示すことが大切です。
| 確認項目 | 依頼前に準備すること |
|---|---|
| 担当時間 | 開始・終了の時刻を具体的に伝える |
| 弔問客対応 | 式場の住所、香典の扱い(受け取る・後日にするか) |
| 電話対応 | 用件とメモの取り方、折り返し先の伝え方 |
| 仏壇 | 場所・線香とろうそくの保管場所 |
| 帰宅後の準備 | 食事・清掃・中陰壇の有無と段取り |
| 緊急連絡先 | 喪主・葬儀社の電話番号 |
- 留守番は信頼関係がある方に、相手の都合を確認したうえで依頼します
- 担当時間・弔問客対応・電話対応・仏壇の扱いは事前に書面やメモで共有しておくと安心です
- 後日、言葉と品物でお礼をするのが一般的な対応です
留守番を頼まれた際の役割と心得
留守番を引き受けた場合、具体的にどのような対応が求められるかを把握しておくと、当日落ち着いて行動できます。役割は主に5つに整理できます。
弔問客への対応
自宅を訪ねてきた弔問客には、丁寧に挨拶し、式場の場所を案内します。「〇〇(喪主名)は式場に出ており、私が代わって対応しております」と伝えたうえで、必要に応じて香典や弔電を預かります。
香典を預かるかどうかは事前にご遺族から指示を受けておき、その指示に従って対応します。故人の死因など込み入ったことを尋ねられた場合は、「詳しいことは私には分かりかねます」と穏やかにお断りして構いません。
預かった香典や弔電は、誰からいつ受け取ったかをメモしておきます。帰宅後にご遺族に正確に伝えられるよう、記録を残しておくことが役割の一つです。
電話対応とメモの管理
留守番中に電話がかかってきた場合は、「家族は葬儀に出ており、留守番をしております」と伝えます。用件を聞き、発信者の氏名・連絡先・用件・折り返しの要否をメモに記録します。
急を要する連絡の場合は、式場に連絡するかどうかをご遺族から事前に取り決めておくとよいでしょう。基本的には遺族の帰宅後に報告する形で構いませんが、緊急の場合の連絡方法を確認しておくと安心です。
仏壇への焼香・中陰壇の管理

葬儀が始まる時間になったら、仏壇に焼香します。ろうそくに火を灯し、線香をあげ、水とご飯を供えます。臨終直後に仏壇を閉める慣習がある地域では、葬儀終了の時間を目安に仏壇を開けるよう求められることもあります。
中陰壇の設置を依頼される場合は、設置場所・必要な用具の保管場所を事前に確認しておきます。葬儀社が準備に来ることもあるため、業者が訪問する時間帯と担当者名をご遺族から聞いておくと、当日の判断がしやすくなります。
帰宅前の準備
遺族が帰宅する前に、室内の軽い清掃と食事の準備(精進落としの料理の受け取りなど)を行うことがあります。具体的な内容はご遺族と事前に打ち合わせておき、無理のない範囲で担当します。
遺族が帰宅する直前には、明かりをつけ、お茶の準備をしておくなど、疲れた状態で戻る遺族への配慮が自然にできるとよいでしょう。こうした細やかな対応が、大変な時期のご遺族の助けになります。
・弔問客の対応(案内・香典預かり・メモ)
・電話対応と記録
・仏壇への焼香・中陰壇の管理
・帰宅前の清掃・食事の準備
- 弔問客から預かった香典・弔電は、誰からいつ受け取ったかを必ず記録します
- 電話の用件はメモに残し、帰宅後に正確に報告できるよう準備します
- 仏壇への対応や中陰壇の準備は、事前に場所や手順を確認しておくとよいでしょう
- 遺族が帰宅する前に室内を整えておくと、疲れた遺族への配慮になります
留守番の服装と持ち物
留守番の服装には厳密な決まりがあるわけではありませんが、弔問客が訪れる可能性を考えると、場にそぐわない服装は避けるのが基本です。
服装の基本的な考え方
留守番は葬儀会場に参列するわけではないため、喪服の着用は必須ではありません。ただし、弔問客を迎える可能性があるため、派手な色柄の服や明らかにカジュアルな私服は適切ではありません。黒・紺・グレーなどダークカラーで清潔感のある平服が一般的な選択です。
一方、「できれば喪服を着用する」というのが、複数の葬儀関連の情報源で示されている考え方です。特に弔問客が多く訪れることが想定される場合や、香典を預かる役割がある場合は、喪服を用意できるなら着用しておくとよいでしょう。
動き回る場面が多いため、動きやすい服装であることも実際的な観点として大切です。食事の準備や清掃なども担う場合はエプロンを持参すると便利です。
持ち物の確認
留守番を行う際に手元に置いておくとよいものとして、メモ帳と筆記用具(電話や弔問客の内容を記録するため)、喪主・葬儀社の緊急連絡先のメモ、香典を預かる場合の保管用封筒や袋などがあります。
数珠やハンカチについては、仏壇に焼香する場面を想定して準備しておくと安心です。香典については、依頼内容(受け取る・後日にするか)を事前に確認したうえで判断します。
地域・宗派による違いへの配慮
仏壇への焼香の作法や中陰壇の設置の有無は、宗派や地域の慣習によって異なります。依頼されたことに不明な点がある場合は、引き受ける前にご遺族に確認しておくとよいでしょう。「一般的にはこうする」という知識を持ちながらも、実際の対応はご遺族の指示に従うことが基本です。
また、自宅葬(自宅で葬儀を行う場合)と斎場葬では留守番の意味合いや役割が変わることがあります。自宅葬の場合、葬儀中も自宅に人がいる状態になるため、留守番という概念よりも「補助役」として立ち回る形に近くなります。
服装:黒・紺・グレー系の平服、または喪服(弔問客対応がある場合)
持ち物:メモ帳・筆記用具、緊急連絡先メモ、数珠・ハンカチ(仏壇焼香のため)
- 弔問客が来る可能性がある場合は、喪服または地味な平服が適切です
- メモ帳と連絡先メモは必ず手元に用意しておくとよいでしょう
- 仏壇焼香がある場合は数珠を準備しておくと安心です
- 宗派・地域による違いは事前にご遺族に確認しておきます
自宅の防犯対策をあわせて整えておく
留守番を依頼できる相手がいない場合でも、いくつかの防犯対策を組み合わせることで、リスクを低減することができます。人を置くことと物理的な対策の両方を整えておくと安心です。
空き巣に留守が知られるきっかけを減らす
葬儀中であることが外部に伝わる経路として、新聞の訃報欄・町内の回覧板・忌中札・SNS投稿があります。これらはいずれも本来の目的(訃報の周知・近隣への礼儀)がある一方、不特定多数に留守の日程が伝わるリスクも伴います。
防犯を優先する場合は、忌中札の掲示を控える、SNSへの投稿は葬儀後にするといった対応が有効です。訃報欄への掲載も、葬儀終了後に掲載する方法(事後告知)を葬儀社と相談できる場合があります。地域の慣習との兼ね合いもあるため、家族で事前に方針を決めておくとよいでしょう。
物理的な防犯対策
自宅を留守にする前に確認しておきたい防犯対策は、施錠(玄関・窓・勝手口)の確認、電灯やテレビ・ラジオをつけっぱなしにして在宅感を演出すること、現金・通帳・貴金属は金庫や外から見えにくい場所に保管することの3点が基本です。
カーテンを閉めた状態でテレビをつけておくと、屋外から室内の様子を確認されにくくなります。防犯砂利を玄関や庭にまくことも一定の抑止効果があるとされていますが、設置前に近隣への影響(音の大きさ)を確認しておくとよいでしょう。
葬儀会場での注意点
自宅の防犯対策と合わせて、葬儀会場内での貴重品管理にも注意が必要です。財布やキャッシュカードは肌身離さず管理するか、目の届く位置に置くことが基本です。
葬儀社スタッフになりすまして香典を持ち去るという事案も報告されています。事前の打ち合わせで葬儀社スタッフの顔と名前を確認しておくこと、指名した受付担当者以外には香典を渡さないことが自衛策として有効です。見知らぬ方から手伝いを申し出られた場合は、丁重にお断りするようにしてください。
| 防犯対策 | 具体的な方法 | 備考 |
|---|---|---|
| 留守番を依頼 | 信頼できる近隣住民・友人に依頼 | 役割の内容を事前に明確にする |
| 在宅感の演出 | 電灯・テレビ・ラジオをつけっぱなし | カーテンは閉めておく |
| 忌中札を控える | 掲示しないか、葬儀後に掲示 | 地域の慣習と照らし合わせて判断 |
| 貴重品の保管 | 金庫・見えにくい場所に保管 | 持ち出し可能な金庫は床への固定も検討 |
| 戸締りの確認 | 窓・勝手口も含め全箇所確認 | 出発前に複数人でダブルチェック |
- 留守が知られるきっかけを事前に減らすことが防犯の第一歩です
- 電灯・テレビをつけっぱなしにする、カーテンを閉めるなど「在宅感の演出」が有効です
- 現金・通帳・貴金属は金庫や見えにくい場所に保管してから外出します
- 葬儀会場でも香典・貴重品の管理を怠らず、見知らぬ方の手伝いの申し出には慎重に対応します
まとめ
葬儀中の留守番は、防犯・弔問客対応・帰宅後の準備という3つの役割を担う、遺族にとって心強いサポートです。誰に頼むか、何を準備するかを事前に整えておくことで、当日の混乱を避けることができます。
留守番を頼む際は、依頼する相手への感謝を忘れず、担当時間・対応内容・緊急連絡先をメモで共有しておくと安心です。頼まれた際は、ご遺族の指示を優先しながら、弔問客対応・電話記録・仏壇焼香・帰宅前の準備を落ち着いて進めてください。
葬儀の準備や当日の流れは、葬儀社や各自治体の窓口に相談することで、個別の状況に合わせたアドバイスを受けることができます。不安な点があれば、早めに確認しておくと余裕をもって備えられます。
本記事の内容は、関係省庁・自治体・業界団体などの公開資料をもとに整理したものです。費用・サービス内容・手続きは地域や事業者によって異なる場合があります。最終的な判断や契約・手続きの前には、必ず各自治体窓口や葬儀社・霊園などの公式窓口で最新情報をご確認ください。

